先日重い腰を上げて、昔録画したVHSテープのDVD化を再開したのですが、磁気テープといえばカビの発生がつきものでして。
ふと気づくと、テープに、
こんなんとか、
こんなんとか、
こんな感じのカビが発生していたりしますね。
まぁ
これぐらい控えめのときもありますが。
ギャンブルでそのままVHSビデオデッキに突っ込んで再生させるのもひとつの手ですが、画質は期待できないですし、ビデオデッキを傷めてしまうかも知れません。また、カビがついたままのテープを再生させると、カビの接着力によってテープが切れてしまい再生不能におちいる危険性もあります。(参考URL)
世の中にはカビ取り&DVDダビングサービスや、高価&レアで手に入りにくいカビ取り装置なんかは存在していますが、1本数千円は出しづらいですし、そもそもテレビ番組を録画したテープはDVDダビングしてくれない業者がほとんどです。
自力でカビ取り装置を作った方もいるようですが(参考URL)、工作が得意でないと難しい選択肢ですね。
つまり現実的には、テープをあきらめるか、簡単に手に入る道具で何とかするしかないのですが、つぶやきなんかでカビたテープの話を見てみると、多くの人がカビてしまったテープ=ゴミという扱いで、もう再生できないし録画したものは消えてしまっているという思い込みをしてあきらめているようでした。
自分も最初はあきらめかけていましたが、数十本のカビたVHSテープと格闘した経験を経て、テープが見た目カビたぐらいでは映像はほとんど消えていないし、また再生させられる状態に持っていくのもそんなに難しくないことがわかりました。カビてるテープは、だいたい見た目ほど重傷ではありません、大丈夫です。
よほど大事なテープは業者にカビ取り&DVDダビングをしてもらうのが安心でしょうけど、そこまででもないけど捨てづらいテープは、あきらめて捨ててしまうだけでなく、初期投資300円+税で自分でカビ取りするという選択肢も、このエントリーによって加えていただけたらと思います。
ここでは余所でよく見る、テープを分解→手巻きリールしながらカビを落としていく方法ではなく、分解まではしますが、手巻きリールはせずに、テープが巻かれた状態のまま何とかする方法を記します。リールするよりは所要時間が4分の1ぐらいになるかと。
ただの試行錯誤の結果なので、これよりいい方法や間違っていることもあるかと思うので自己責任でお願いします。カビ取りしてそのまま使い続ける目的ではなく、カビ取り後にDVD化などしてあと1回再生できればいい状態にするものとお考えください。
用意するもの:
プラスドライバー、マイナスドライバー:各1本
100均のドライバーセットのやつでいいです。
綿棒:たくさん
100均のでいいです。
水でもいいと思うけど気持ち除菌スプレー。
見ての通り100均のです。無水アルコールがいいとかいう情報もありましたが気にしません。適したものがあるんだろうけど、知らずに適当なのを選ぶとテープ自体を痛めそうなので弱そうだけどその後すぐカビが出るわけでもなさそうなものを。
(できれば)ダビング用には使わないもう使わないビデオデッキ:1台
VHSの分解
分解に関しては、こちらも参考になります。> 参考URL
ラベルがついている場合はVHSを開けられないので、まず割れ目に沿って切るなり、ラベルを剥がすなりします。マイナスドライバーでごりごりやると簡単。
裏向きにしてネジを5本抜きます。普通のプラスネジなので簡単です。ネジの位置はメーカーやテープによって若干異なっているようですが、四隅と真ん中にあることは基本変わらないでしょう。
こじ開ける前に表向きに戻します。VHSテープ内にある細かいパーツは、テープ外枠の裏側パーツの方にセットされているので、裏向きのまま開けると細かいパーツが落下して大変なことになります。
パーツをこぼさないように気をつけながらこじ開けます。テープによって開けやすい開けづらいはいろいろありますが、おおむね前方がちょっと開きやすいです。
うまく開かないときは開いたすきまにマイナスドライバーを突っ込むと開けやすいです。
ラベル部を先に切ってあるのでラベル部分も開けやすくなっています。
開きました。見事にカビています。
テープを外す前に、テープがどこを通っていたか確認しておきましょう。戻すとき間違えると再生できなくなります。
中央のテープストッパー(っていうのかな?)はメーカーやテープによっていろいろで、外れやすかったりすることもあるので、元に戻せなくならないようにしましょう。
カビ取り
テープのみ取り出します。
見てるだけでムセそうなカビですが……。
テープガイド(っていうのかな?テープの窓から見えるテープの上につけてある透明な板。テープによっては穴がいっぱい開いていたりとデザインもいろいろ)に覆われていて、このままではカビが拭けません。
あちこちでよく見るカビ取り方法では、テープを引っ張ってテープの長さだけ拭き作業をしていくことになりますが、その作業は経験的に1本2時間はかかりました……(やったことはある)。そちらの方がよりカビが取れるとは思いますが、あまりやりたくはないです。
なので……
取ります。というか割ります。※ケガに注意(破片が飛ぶこともあるので、安全メガネや手袋をすると安心)
割れ残った部分はマイナスドライバーとか使ってテープの上に被っている分はすべて外します。すべて外すのには見えているカビを取る以外の目的もあるので、パーツの下にカビがなくてもすべて取って下さい。
ただの何もしらない素人なので、詳しいことは知りませんが、この壊したパーツは、テープがほどけないようにであったり、巻き取る際に変なところにいかないようにするガイドだと思われ、これがなくてもデッキが正常にテープを回してくれれば正しい位置に巻き取られるため、なくてもそれほど問題がないパーツだと思われます。(実際この外したテープはあとで再生するわけですし)
透明板がなくなり、テープがむき出しになりました。
綿棒と除菌スプレーの出番です。
除菌スプレー液をしみこませた綿棒で
表面(テープ側面)をそのまま拭いていきます。
綿棒は惜しまず、ちょっと汚れたと思ったらどんどん替えていきます。カビを伸ばしちゃうので。
たっぷり液を使った方がカビが浮いてきたりして取りやすいです。(テープが痛むかどうかは知りません)
水拭きとから拭きを繰り返す感じで綿棒にカビをつけて取るイメージでしょうか。
汚れた綿棒。
たくさんの綿棒の犠牲のもと、見た目的にはきれいになりました。
きれいになったのでカセットに戻したいところですが、ちょっと待って下さい。そう反対側ですね。表がカビていたなら当然裏にもカビが発生しています。見えづらいですが、何か白いです。カビです。
この反対側についている歯車パーツは表側にあった透明板とは違って、壊すとテープとして使えなくなるので壊せません。
そして弾性も高くないので、すきまから綿棒を入れて拭くのも現実的ではありません。
ここで前面の透明板を全部取り払っていたことが生きてきます。
テープを強くわしづかみにして、引っ張り上げると……
テープがズレて、すきまができます。強くわしづかめないとこのように真ん中がちょっとついてこなかったりしますが……。
見ての通り引っ張り上げるので、透明板が残っているとできない作業です。
表から見るとこんな感じ。
表面同様、開いたスキマから除菌スプレー液つき綿棒を入れて拭いていきます。
拭き終わったらひっくり返して、まっすぐ押して、元の位置に戻します。
ちょっと失敗しました。なんかこんもり。
ここまで掃除したら見えていると思いますが、テープの端がこんなにカビていても、テープの表面はあんまり目立つカビはありません。
でも、巻かれていなかった部分およびテープの最外周にはカビが出ていることがあるので、そこは拭いておきます(30cmぐらいでしょうか)
その他メンテ
たまにここのテープの折り返し前にあるピラピラしたガイドが汚れていることがあるので、
ここも拭いておきます。
その他気になるところも拭いておきます。
組み立て
分解したときとは逆に、組み立てていきます。
ケースを戻します。奥のローラーのところに合わせつつ、上側ケースをはめると楽です。
ネジ止めもお忘れなく。
→
ビフォーアフター
使われた綿棒。
慣れればここまで1本30分ぐらいですかね……。掃除好きの人だと、きれいになっていくテープが気持ちいいので結構ハマるかもです。従来の巻き取りながらのカビ取り方式では、拭いたあと巻き取ってみてはじめてきれいなテープが見えてくるので、拭いている最中は掃除している実感があんまりないという問題も解決です。
再生・ダビング
思いっきり水拭きした状態なので、しばらくは再生しない方が賢明でしょう。1日ぐらいは置いてほしいところです。
カビ掃除中にテープがいっぱい出てきちゃったり、手巻きした部分もあるでしょうし、残カビもあると思われるので、いきなり再生しないで、いったん早送り&巻き戻しを再生には使わないビデオデッキにやらせて、回転時に落ちるカビを落とし、テープの巻きを強くしておくとよいでしょう。
早送り&巻き戻しで、カビ取り時にこんもりしちゃったところもテープにきれいに巻き取りされました。
再生しても問題は見えません。きれいなもんです。21エモンVol.4テープに入っていた第37話(1992年3月12日放送)も問題なく。
カビを取ったテープは早めにダビングなどをして再度カビが生えてくるまえに処理しておきたいところです。
その他あぶれ情報
テープが切れそうなほどのカビがないときは、上記の綿棒拭きまでもしないで、再生には使わないデッキに早送り&巻き戻しをさせると、結構なカビが取れるので、カビがそんなになさそうなときはそれでもよいでしょうが、カビの粘着性はギャンブルなので運が悪ければテープ切れてしまいます。
→
また、「早送りのスピードで回転させると切れてしまう」場合は、テープがちゃんと巻戻された状態であるなら、使わないビデオデッキで再生(スピードが遅い)させることでカビを落とす方法もあります。再生させた状態での早送り・巻き戻しでスピード調整するのもアリかと。ただ、使わないデッキへのカビの侵食が結構怖いです。
表面はそれほどカビが見えてないけど、裏はびっちり……の可能性もなくはないので(固まってあるカビがあるとテープが切れやすい)、不安ならやっぱり開けて見たいところではありますね……。
カビがついた状態のままでの再生は何が問題なのか考えてみる
上記のカビ除去方法で特に大きな問題がなく再生できることがわかったところで、「テープ表面のカビを取っていないのに映像がきちんと出るということは、カビなんて取らなくてもそのまま再生できたのではないか?」という、ひとつの疑問が生まれます。
そう、ちゃんと再生できるということは、巻いてあった部分のテープの表面はほとんどカビに覆われておらず、映像の記録自体は別に消えていなかったということなのです。カビのほとんどはテープの側面についているだけでした。
問題1:カビの糊効果
カビには結合力があるので、テープの側面にガムがついているような状態に近いと想像できます。そのままテープを回そうとしても、糊でくっついた状態なので、回らず、回そうとする力にテープが負けてしまうとテープが切れてしまうことになります。
問題2:ビデオデッキへの影響
ビデオデッキはテープを読み取っていくので、そのテープの側面だろうとカビがあれば、それごと巻き込んで、デッキ内を汚してしまいます。テープ読み取り部が汚れてしまうと、映像・音声が乱れてしまいますね。側面ガビがパラパラと読み取り部に落ちながら再生してしまっては再生中もうまくいかないし、再生後もゴミが残ってしまうこともあるでしょう。
問題3:テープへの影響
ビデオテープ内もそのままテープを巻くことでカビが移動していくので、ケース内の各所に汚れ(カビ)が付着していくことになります。巻き取りがスムーズにならなくなったり、テープに傷をつけてしまったりして、映像や音声が乱れることが考えられます。
と、推測してみたけど、実際のところはどうなんだろうね? とりあえず、経験則的には、テープ内のカビは、取りましょう。
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